モーゼル醸造所訪問2003年2月〜4月
カーゼル葡萄栽培者協同組合醸造所
クリュセラート・ヴァイラー醸造所
パウリンスホーフ醸造所
Kaseler Winzergenossenschaft (Kasel/Ruwer)
Weingut Kluessrath-Weiler (Trittenheim)
Weingut Paulinshof (Kesten)



1.カーゼル葡萄栽培者協同組合醸造所


モーゼル川の支流のひとつに、ルーヴァー川があります。
ローマ時代から続く町トリアーの近くで本流に合流するその川幅は、一番広い場所でもせいぜ
い2,3m。小川の様なささやかな風情です。

このルーヴァー川が、ドイツに13あるワイン生産地帯のひとつ、モーゼル・ザール・ルーヴァー
に含まれる小地区で、上流からヴァルドラッハ、カーゼル、メルテスドルフ、アイテルスバッハの
ワイン村が続いています。

日差しの中にわずかに春の気配が感じられる
2月の半ば、カーゼル村の協同組合醸造所に
行ってきました。坂道が多い村の一角の、小さ
な中庭の奥に納屋があり、そこが醸造所でし
た。ドイツで一番小さな協同組合醸造所と言わ
れるだけあって、その佇まいも質素です。納屋
の背後に広がる葡萄畑の斜面が、冬の真っ青
な空の下で静かに春を待っていました。

かつて30人前後だった会員も、いまやわずか13人。そのほとんどは他に本業を持っていて、仕
事が終わった後の日没までの数時間と、週末に葡萄畑の世話をしています。会員減少の最大
の理由は、樽売りワインの価格低迷。この協同組合では、1リットルあたり1ユーロから2ユーロ
(120円から240円)で買い取っている計算になるのですが、大手ワイン商社は樽売りワインをそ
れよりもかなり安く買い叩いているそうです。

会員ひとりあたり平均2000リットルぶんのワインになる収穫を持ち込むといいますから、2000
ユーロから4000ユーロ(24万円から48万円)の収入。一年間の結果がこれでは、金額だけを見
ると、葡萄畑の世話をやめてしまうのも仕方ないことかもしれません。逆に言えば、これでもま
だ葡萄の世話を続けている人は、お金以上の何かをワイン造りに見出している人々なのかも
しれません。

応対していただいたのは、組合代表兼醸造責任者
のルートヴィヒ・シェルフさん。年の頃は60代半ばで
しょうか。大変親切な方でした。

地下蔵には他のワイン農家と同じ様に、この地方の
伝統的な1000リットル入りのフーダーと呼ばれる木
樽が12ほど並んでいましたが、今はもう使っておら
ず、醸造にはステンレスタンクを用いています。
地上の納屋の中には葡萄圧搾機が2台にフォークリフト、瓶詰めマシンが所狭しと並び、奥ま
った部屋に高さ3mほどのステンレスタンクが6基とフィルターマシン、ポリエチレンタンクがこ
れまた狭そうに並んで、物置の棚にはボトル用の箱が雑然と積み重なっていました。

ほんとうに小さな、個人経営のワイン農家と大差ない規模です。
1934年、当時ナチスの指導で村一つにつき醸造所一つに統合されることになり、この醸造組
合が発足しました。それ以前は実際個人経営の醸造所で、地下蔵の一番古い部分は、およそ
200年前に造られたということです。

試飲したワインは

1. 2001 Kaseler Nies'chen Riesling Spaetlese
まとまりのいい、上々の品質のリースリングシュペートレーゼ。

2. 2001 Kaseler Kehrnagel Riesling Auslese
アイスワインになりそこなったアウスレーゼ。
収穫時の糖度がわずか5エクスレほど足りなかったので、アウスレーゼを名乗ってはいるもの
の、香味のニュアンスにはっきりとしたアイスワインの要素があります。綺麗な甘さ、濃いめの
フルーツ、奥行きのあるボディ。1.のシュペートレーゼ5.5ユーロに対して、750mlで12ユーロは
すこし値が張っていますが、まず納得のできる価格です。

3. 2001 Kaseler Herrenberg Riesling Kabinett
快適なカビネット。どんな食事にも気軽にあわせることが出来そうなタイプ。

「せっかくだから、樽試飲もするか?」とシェルフさん。
「えぇ、ぜひ!」と僕。おもわず頬がほころびます。

樽試飲1
まずステンレスタンクから、中辛口のリースリング・シュ
ペートレーゼ。フレッシュな、いかにも出来立ての、ストレ
ートなフルーツ感、青りんご、洋なし。

樽試飲2
次に部屋の片隅のポリタンクに入っていた、リヴァーナ
ー。これも中辛口で、酸味はリースリングよりも穏やか
で、口当たりがよく、適度にフルーティ。あの容量からす
ると、約300リットルくらい?

樽試飲3
そしてリースリング・シュペートレーゼの甘口。これは畑
の個性なのか醸造によるものか、すこし酵母の香りが不
自然に残り、ややイマイチ。

樽試飲4
今度はリースリング・シュペートレーゼの別タンクの甘
口。これは堂々として充実して、上出来。
タンクとタンクの間に、ひとかかえほどの菰につつまれたガラス瓶があり、なにかと思えば案の
定、アイスワイン。きっともの欲しそうな目つきだったのでしょう。シェルフさんは「せっかくだし
な。」といいつつ、貴重なワインを試飲させていただけることに。

細いホースをぶんぶん振り回しながら隣の部屋から戻ってきたシェルフさんは、おもむろに片
側を瓶の口につっこむと、もう片方の口からワインを吸いあげ、サイフォンの原理でグラスに注
ぎました。

樽試飲5
収穫は2002年12月11日。濃密さはそれほどではなく、やや軽やかで繊細、気品のある、ファイ
ンなアイスワイン。

思いのほか色々と試飲させていただいて、かなり幸せな気分で帰途についたのでした。
6月のワイン祭りで、醸造所を開放して即席居酒屋をやるそうですので、また顔を出そうとおも
います。

Winzergenossenschaft 
Kasel
Schulstrasse 1
54317 Kasel / 
Germany
Tel. (0651) 52117  
Fax. 52117

(訪問前に予約する必
要があります)




2.クリュセラート・ヴァイラー醸造所


3月下旬の週末、トリッテンハイム村へと向かった。
ベルンカステルとトリアーのちょうど中間あたりにある、ぐるりとうねったモーゼル河にかこまれ
たこの村は、僕の印象では、フルーティで酸味と甘みの快適な、ある意味典型的なモーゼルワ
インの産地である。

アイヒェルマンのワインガイドによると、こ
の村には二つ、抜きん出た醸造所がある。

ひとつは、フランツ・ヨーゼフ・アイフェル醸
造所。トリッテンハイマー・アポテーケとアル
ターヒェンの畑をもっているのだげれど、こ
の醸造所はどちらの畑のものも素晴らし
い。村の対岸に聳えるアポテーケの急斜面
に対して、アルターヒェンは傾斜のゆるや
かな、ほぼ平地に広がる畑であり、どちら
かといえば凡庸なワインが多いのだが、こ
の醸造所のものは別格。
(トリッテンハイム村。右岸斜面がアポテーケ、左岸がアルターヒェン)

もうひとつの醸造所が、今回訪問したクリュセラート・ヴァイラー醸造所だ。
VDPにも、ベルンカステラー・リングにも所属せず、従って試飲する機会も少なかったのだけれ
ど、トリアーの大聖堂のはすむかいにあるワインバーでシュペートレーゼを飲んだとき、その酸
味の生き生きとした凝縮感に、「うわぉ」と驚いた。他のワインも飲んでみたい!一体どんな人
が造っているのだろう?そう思わずにはおれなかった。



トリッテンハイムに到着すると、快晴のモーゼル河の河岸にあるベンチで、地元の老人たちが
目前に広がるアポテーケの斜面をながめながら、おしゃべりに興じているのが見えた。醸造所
の庭先では桃に似た花が満開で、葡萄畑はまだ冬景色だったが、空気の中にすでに初夏の
気配が満ちていた。

醸造所兼ホテルのテラスで、僕達はご
主人のヘルムート・クリュセラートさんと
ワインを囲んだ。まずは辛口から。
2001 Riesling HC Classic trocken
生き生きとしてフレッシュなアロマ。酸味
は穏やかで口いっぱいに広がるフルー
ツ、ミネラルを伴う凝縮感、アフタになぜ
かヴァニラとミネラル。う〜ん、上出来。
HCはご主人と奥様(Hilde)のイニシャ
ル。
2001 Riesling Spaetlese trocken
HCよりもやや酸味がはっきりしており、
ある意味上品。HCと同様に凝縮して中
身が詰まっている。
(オーナー兼醸造主任のヘルムート・クリュセラート氏。)



醸造には伝統的なフーダー樽とステンレスタンクを併用している。ヘルムート氏によれば、どち
らを使ってもワインはそれほど違わない、という。決定的なのは葡萄畑での仕事である。平均
収穫量は66hl/ha、剪定はツァップフ・シュニットという、一枝につき二芽だけに短く切り詰めた
枝を、葡萄の樹一本あたり5本残している。収穫時期は非常に遅く、2002年は10月25日から11
月21日まで続いた。結果、収穫のほとんどがワイン法ではアウスレーゼに相当する熟度に達し
たが、雨が降ったりやんだりの天候で、95エクスレ以上にはなかなか達しなかったという。



次に中辛口の試飲。

2001 Riesling HC Classic
酸味が極めて穏やかで、飲みやすい。すこし大人しすぎるか?酸味が苦手という人にはおす
すめしたいワイン。フルーツ感はしっかりしている。

2001 Trittenheimer Apotheke
Riesling Spaetlese halbtrocken
これも酸味が非常に穏やか。フルーツ感
はたっぷりして、ミネラルがほどよく溶け
込んでいる。

2001 Riesling Auslese
Trittenheimer Apotheke
halbtrocken
ヴォリューム感のある、飲み応えのあ
る、凝縮した、調和のとれた、間違いなく
大きなワイン。見事。
(トリッテンハイマー・アポテーケとライターヒェンの畑。同一の畑名であっても、向きや環境は様々だ。)
HC Classic halbtrockenは辛口に仕立てたものに甘口ワインをブレンドして味をととのえたも
の。酸味が非常に穏やかなのは、遅めの収穫時点ですでにそれだけ酸度が低くなっていたか
らだそうで、醸造過程で意図的な減酸は行っていない。



最後に、甘口ワイン。
2001 Trittenheimer Apotheke Riesling Spaetlese*
シュペートレーゼというよりも、すでに十分アウスレーゼの風格を備えている。フルーツ感がた
っぷりとして、完熟したフルーツ、夏みかん。フルーツにそのままかぶりついたような、素直に
美味しい凝縮感のある甘口。飲み飽きない。

2001年産のシュペートレーゼは星なしから星二つまでに分かれている。トリアーで飲んだのは
星なしだったけど、それでも十分充実していた。

2001 Trittenheimer Apotheke Riesling Auslese*
香り豊か、長いアフタ、複雑、押し付けがましくなくて濃密、幾重にも綾なすフルーツ感、長い余
韻。これも素晴らしい。



辛口から甘口まで、これだけ見事なワインを造っていながら、VDPやベルンカステラー・リング
に加盟していないのは不思議だ、と聞いたところ、実は1997年と2001年に2回、VDPに加盟申
請を出したが、却下されてしまったそうである。

なぜ却下されたのか、その理由はわからない。
ひとつ考えられることは、VDPに加盟を許されるには、すでに加盟している醸造所3分の2以
上の賛成が必要なのだが、競合を嫌った醸造所が反対票を投じたのではないか、ということで
ある。

ではベルンカステラー・リングには加盟しないのか、と聞くと、誘いがあったが、VDP加盟を希
望していたので断ったそうだ。今後は、どの醸造所組合にも加盟するつもりは無いそうである。

独立独歩、わが道を行く。
アイヒェルマンのワインガイド2003年版で1000に及ぶ醸造所の中から『今年の醸造所 白ワイ
ン部門最優秀賞』に選ばれており、ファンもしっかりついていて、ワインの売れ行きも上々なの
だから、いまさらあえてどこかの団体に加盟する必要も無いのかもしれない。

とはいうものの、ゴー・ミヨの評価(5点中3点)には、いまひとつ不満を隠せない様子だった。
部屋の奥からゴー・ミヨの2003年版を持ってくると、一枚の紙片を取り出し、僕たちの前に広げ
た。

「個々のワインの評価の平均点と、醸造所の総合評価を比べてみたんだよ。醸造所によって
はウチよりワインの評価の平均点は低いのに、醸造所の総合評価が高いところがいくつかあ
るだろ。ちょっと納得行かないよ。」

手書きで計算された紙片を眺めながら、このご主人の野心とともに、ちょっとほほえましさを感
じた。ワインガイドの評価は別にしても、実力十分な醸造所であることは、間違いない。2002年
産のリリースが楽しみである。




3.パウリンスホーフ醸造所



パウリンスホーフ醸造所のあるケステン村は、フリッツ・ハーグ醸造所で有名なブラウネベルク
村の対岸にある。

しかし、モーゼルを渡る橋は3km上流のミンハイム村近郊か、3km下流のミュルハイム村ま
で行かないと無い。車か、モーゼルを泳いで渡る勇気があればわりと容易にたどり着けるのだ
が、村を通るバスはほぼ4時間に1本しかなく、なかなか行きにくい場所である。

この村の中ほどに、パウリンスホーフ醸造所がある。ベルンカステラー・リングに加盟してお
り、毎年新酒の試飲会では何度か飲んでいて、割と気に入っている醸造所だ。個人的な印象
では、特にハルプトロッケン(中辛口)は他には無い、独特の充実感とバランスを備えている。
1998年産以降、毎年アウスレーゼのハルプトロッケンとトロッケンは、説得力のあるいいワイン
だと思う。

この醸造所のもうひとつの長所は、予約なしでも訪問できる、モーゼルでは比較的少ない親切
な醸造所である、という点だ。一応、本当に予約なしで訪問できるかどうか電話で確認を入れ
たところ、「もちろん!」と、オーナーの一人クリスタ・ユングリングさんの明快な回答を頂いた。

パウリンスホーフ醸造所の歴史は10世紀までさかのぼることができる。
もともとトリアーのパウリン教会が所有していたものを、1969年に現在のオーナーご夫妻が購
入し、以来ワイン造りに力を注いできた。



醸造所を一通り見学させていただいたあと(予約なしで醸造施設まで見学させて頂けることは、比較的少ない)、クリスタさんを囲んで試飲室で試飲。まずは辛口から。

2002 Paulinshof Guts-Riesling trocken
1月に瓶詰めされたばかり。非常に若く、酸がやや荒れており、おちつくまでもう少し待つ必要あり。1月4日にすでにトリアーのワインバーのワインリストに載っていたのを見たときには、そのリリースの早さに驚いたのだけど、味はその時の方が美味しかった。

クリスタさんによると、瓶詰めからしばらくすると、ワインはそのショックで調和を失う時期を迎える。それが現在。その後ゆっくりと上昇をはじめて、数ヶ月で回復。そのまま長い上昇期間が続くそうだ。

2001 Braunebeger Juffer Kabinett trocken
カビネットだが、十分に飲みごたえがある。収穫時の糖度は84エクスレ。
(クリスタ・ユングリングさん。)

2001は収穫の90%がアウスレーゼクラスだったそうで、この年のこの醸造所のワインに外れは
なさそう。もっとも、ゴー・ミヨの評価は僕の個人的な印象よりも若干辛めではあるし、アイヒェ
ルマンもボトリティスのヒントが目立ちすぎる、とコメントしている。また、今回同行した一人も、
香りの点ですこし厳しい評価をしていた。好みの分かれる造り手なのかもしれない。

2001 Kestener Paulins-Hofberger Auslese trocken
凝縮感のある、飲み応えのある、複雑な、しっかりとした、グレープフルーツの皮の苦味があ
る、充実した辛口。収穫時の糖度96エクスレ。味は十分に見事なワインなのだけど、香りのフ
ルーツ感は知人の言うようにやや控えめ。でも、僕はけっこう気に入っている。



この醸造所はすべてのワインをステンレスタンク
で醸造している。

ステンレスタンクの長所は、メンテナンスと発酵
時の温度管理が容易なのと、伝統的な木樽に比
べて酸素とのコンタクトが少ないため、フレッシュ
なフルーツのアロマがはっきりとしたワインを造り
やすい。確かにどのワインも魅力的なフルーツ感
にあふれていた。

2001 Kestener Paulins-Hofberger
Kabinett halbtrocken
濃い目で、太めボディの、充実した、桃に似たア
ロマのある、満足感のある中辛口。完熟した夏
みかん。このワイン、じつは昨年6月にも試飲し
ているが、そのときはあまり好印象を持たな
かった。あるいは瓶詰め直後のボトルショックだったのかもしれない。

2001 Brauneberger Juffer Spaetlese feinherb
いままでファインハーブはハルプトロッケンの同義語だと思っていたが、この醸造所ではハル
プトロッケンよりも若干甘口のワインを指す。残糖25g/l。しかし甘酸のバランスは見事で、ほぼ
完璧な調和。この醸造所の残糖の残し具合のセンスが良く出ている。

2000 Brauneberger Kammer Auslese halbtrocken
複雑な調和を見せる、やや重めのボディ、熟成を経て角がまるくなっている。他のワインと同様
に飲み応えのあるフルーツ感。雨が多く難しい年だった2000年に、よくこれだけのアウスレー
ゼ中辛口が出来たものだ、と思う。



ここから甘口。

2002 Brauneberger Juffer Kabinett
1週間前に瓶詰めしたばかりで、酵母の香りがまだ残っている。軽く、本調子まではまだ待つ
必要あり。未熟なパイナップルの皮のヒント、とユングリングさん。

余談だが、この醸造所でワインを買うと、個々のワインに保証書のような、収穫時の糖度と細
かなティスティングコメント、適温、おすすめ料理などを解説したメモがついてくる。クリスタさん
が書いているのだが、その的確な表現はさすが、といつも思う。

「実際のフルーツの香りを、しっかりと頭に入れておくの。そして、いつもどのフルーツと共通す
る香味があるか、集中して試飲していると、だんだん的確な表現がみつかるようになってくる
わ。」と言うのだが、これがなかなか、難しい。

2001 Brauneberger Juffer-Sonnenuhr Auslese
う〜ん、美味しい。2001年産のアウスレーゼは辛口から甘口まですべて飲んだけど、どれも満
足のいくものだった。多面的で複雑な甘み。アフタが非常に長く、甘いフルーツが幾重にも広
がる。ネクター。見事なアウスレーゼ。収穫時の糖度は104エクスレ。

ちなみに、このワインについてくる保証書の、ユングリングさんのコメント:
「いちぢくや干し葡萄の様な、乾燥した果実の甘さを思わせる複雑なブケ。味は繊細な刺激と
マンゴーと柿の果実味を伴う、あふれんばかりのベリー系の甘さ。」さすが、プロフェッショナル
なボキャブラリーの豊かさである。

最後に、偶然開いていた古酒を試飲させて頂いた。
大事なお客様が訪問した直後に醸造所に行くと、時々運良く、そのおこぼれにあずかることも
ある。

1976 Kestener Paulinshofberg Riesling Auslese
当時の収穫量は75hl/ha、それに対して2001年産は45hl/ha。
ワインもそれ相応な濃度で、近年産に比べるとインパクトは弱いが、それはそれ。
30年近くを経たワインのひなびた甘さは、おだやかに舌の上に残り、静かに消えていく。

このワインを造った当時、ユングリングさんはまだ20代。それを造った方と古酒を飲むとき、
その人の歩んできた人生に思いを馳せないわけにはいかない。もっとも、何から聞いてよいの
かすぐには思い浮かばなかったので、僕達はクラシック音楽の流れる試飲室で、静かに時の
流れるままに、ワインを味わっていた。




3.反省


醸造所を訪れるといつも思うのだが、せっかく貴重な時間を割いて応対していただいたからに
は、ワインを飲むだけではわからない、そのワインを造る過程の苦労などを伺って、もっとよく
ワインを理解したいと思うのだけれど、ちょっと話を聞いただけでは、表面的な話題にとどまっ
て、つっこんだ話まではなかなか伺えない。

これだけ素晴らしいワインには、相当大変な仕事がつまっているに違いないとは思うのだが、
やはり苦労は自分で背負ってみないと、実感として感じるのは、当然ながら難しい。

ワインに圧倒される一方で勉強不足を身にしみて感じながら、僕に出来ることは、造り手が丹
精こめたワインを、ただ感謝して味わうことだけだなぁ、としみじみ思った。


(2003年4月)



Weingut Cluesserath-Weiler
Haus and der Bruecke
54349 Trittenheim 
Germany
Tel. (06507) 5011
Fax. 5605
Email: helmut@cluesserath-weiler.de
http://www.cluesserath-weiler.de
(訪問前に予約する必要があります)
Weingut Paulinshof
Paulinstrasse 14
54518 Kesten
Germany
Tel. (06535) 544
Fax. 1267
Email: paulinshof@t-online.de
http://www.paulinshof.de
訪問受付時間:
月-金 8:00-18:00 土 9:00-17:00
この他は要予約
(念のため、事前に確認することをお勧めします)






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