ニッテル村のワイン祭り


4月30日からその次の日曜日まで、例年オーバーモーゼルのニッテル村でワイン祭り−Tag 
der oeffnen Kellerが開催されます。

オーバーモーゼルは、エルプリングがローマ時代からこのあたりで栽培されていたという所で、
土壌もモーゼルに多いスレート岩ではなく、石灰質です。地質的にブルゴーニュやシャンパー
ニュと似ているということから、近年ではブルグンダー系品種の栽培が増えてきているのです
が、品種にかかわらず、さっぱりした辛口のワインが多いです。

村の広場にマイバウムと呼ばれる、高さ15mもあるでしょうか、先
の方に色とりどりのリボンが風になびく細めの木が立っていま
す。4月30日の夜に、このマイバウムを村の若者が立てるのが伝
統となっている村が、まだ多くあります。先端までよじ登り、リボン
を取った者は願い事がかなうとか、その夜、思いを寄せた娘の家
の前に、丸太の切り株を置くといった風習が、かつてはあったそ
うですが、今は悪ガキがトイレットペーパーやらジャムで、路上駐
車した車に悪さをするのが半ば認められた日となっています。

ニッテル村の一つ手前の駅で列車を降り、ちょっとした山歩きに
出ました。斜面を息をあらげながら登り、集落を抜けてしばらく歩
くと、ニッテル村をすり鉢状にとりかこむように葡萄畑の斜面が広
がる丘の上に出ます。眼下に一面に葡萄畑の広がる光景は、い
つ出会っても感動的です。


葡萄畑の畝と畝の間に、沢山のタンポポが生えてお
り、その大半はすでに綿帽子となって、折から吹き抜
ける強風に舞い上がっていました。

エルプリングは4月最終週から発芽がはじまり、円形
に曲げた枝に緑の葉がつぼみのように並ぶ、葡萄農
家が『髪飾り』と呼ぶ段階は、はやくも過ぎ去ろうとし
ているようでしたが、その葉の勢いから、今年の夏が
急速に深まりつつある気配が感じられます。

そろそろおなかが空いてきたころ、ニッテル村に到着。

10軒近い醸造所が、祭りに参加して祝日と日曜は昼から居酒屋を開業しているのですが、どこも人があふれていました。空席をみつけるのが難しいほどの盛況。僕達は運良く、とある醸造所の庭先のベンチを確保。すぐ近くで自家製ステーキを焼いていて、焼き肉の香ばしい香りがあたりに満ちていました。臨時雇いのお手伝いさんもてんてこ舞いの大忙しの様子で、ステーキを焼いているおやじさんも、汗をぬぐいながら次々と肉を焼き網の上にならべています。ほどなく運ばれてきたワインで、僕らは好天に恵まれた幸運を祝って、グラスを合わせて乾杯し、休日の午後のひとときを楽しんだのでした。

参考情報
交通機関 トリアーから列車で約30分。1時間に1本運行。
ワイン祭り
開催期間
毎年4月30日から次の日曜日(2003年は5月4日)まで。日曜・祝日は昼から、その他は夕方6時ころから開始。
みどころ 初夏の葡萄畑、醸造所の居酒屋、祭りの期間中の土曜日に村の公民館でオーバーモーゼル産ワイン100種類前後の試飲会(16:00-19:00)。
問い合わせ Heimat & Verkehrsverein Nittel
Im Stolzenwingert 24, 54453 Nittel, Germany


(2003年5月)




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