その日、ショーデンの村祭りが醸造所の近所で開催されていた。普段は閑静
な田舎の住宅街なのだが、通りを通行止めにして設置されたテントとワインス
タンドの一帯は、ブラスバンドの演奏と村人達のざわめきで賑わっていた。
珍しげな視線を送る村人達の間を通り抜けると、普通の一軒家にしか見えない
醸造所の庭先で新聞を読んでいたロッホ氏が立ち上がり、手を振るのが見え
た。ここに来るのは昨年の秋、収穫を見学させてもらって以来だ。二週間前に
新酒の案内を顧客に発送してから、ほぼ毎日のように試飲に来る訪問客があ
り、休む暇もないそうだ。
「それに最近は畑の草の成長も勢いよくてね。あまり伸び放題にすると葡萄と
喧嘩するから、丈を低く刈らなくちゃならないんだ。」 |
(ショーデンの村祭り)
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