9月下旬、オルテガなど早熟量産系品種から始まった収穫は、10月上旬にミュラートゥルガウ、中旬にブルグンダー系へと進み、10月下旬にようやくリースリングへと移った。10月20日まで寒冷で雨か曇りが続いていたが、21日から25日まで晴天が続き、リースリングは最後の仕上げの成熟をすることが出来た。

ひさしぶりの青空が広がった21日午後、僕はザールへ写真をとりに出かけた。





農道に止めてあったトラクターの荷台に山と積まれたリースリング。葡萄畑の畝の間から農民の雑談が聞こえてくる。ちなみに、左右の写真は同じ葡萄。左が普通の一眼レフのニコンF65、右がデジカメのキャノンA70。

畑で仕事をしていたのは、ヴィルテンゲンの葡萄農家ヨハン・ノイ・カルゲスだった。彼の収穫は大胆で、葡萄のなった枝ごと切り取って、バケツの上で房を切り落としていた。

古木に成った葡萄。房は小さいが、小粒なほど糖度は高く味わいもピュアな気がする。....おっと、つまみ食いしたことがばれてしまった。

真っ青な青空に紅葉した葉が映え
ている。秋は一年で最も絵になる
季節だが、過ぎ去るのも早い。

ヴィルティンガー・クップの畑の麓には線路が通り、時々列車が走り抜ける轟音が遠くから聞こえる。

下はカンツェムに近いヴィルティンガー・ヘレの畑から撮ったパノラマ(左右に長いです)。

左手前がヴィルティンガー・クップ、右隣の山の左半分がゴッテスフス、右半分がクロスターベルク。







ドイツの秋は短く、紅葉もあっという間に終わってしまう。葡萄の葉が黄色く色づいたら、その最も美しい時期は長くて1週間。その間何日間好天に恵まれるかは運次第である。

ザールに赴いた次の日曜日、今度はルーヴァーへと赴いた。どちらもトリアーから近く、電車かバスで30分ほどだ。

その日は日曜日だったが、翌日から雨がちになるという天気予報も
あって、あちこちで収穫作業が行われていた。

たまたま出くわしたのが、ワインスタンドで顔なじみのカーゼル村の
エアハート・シェルフ醸造所の収穫作業だった。ここの畑は葡萄畝
の間隔が2mと離れていて風通しがよく、葡萄もボトリティスのつい
たものとそうでないものと分けて収穫していた(右写真の左のコンテ
ナが健全な房、右が痛みのあるもの)。この醸造所のクリアな果実
感の理由がひとつ判った。

畑によって紅葉の程度は様々で、まだ緑の多いところもあれば、輝くような黄色に染まったところもある。緑が残っているうちは光合成により葡萄は熟し、黄色になると水分の蒸発で果汁濃度が高くなる。しかし糖度のほかにも志の高い造り手は葡萄の生理的熟成Physiologische Reifeを目指し、収穫をギリギリまで遅らせる。



最近では小さなコンテナに葡
萄を集め、台車に乗せて斜
面を運ぶ光景を良く見かける
が、時々まだ伝統的な背負
い籠で収穫を行っているとこ
ろもある。写真はシュペート
ブルグンダーの収穫。肩ごし
に葡萄を放り投げるようにし
て開けるのがコツである。

マキシミン・グリュンハウスの葡萄畑でも収穫が始まっていた。一台のトラクターにいくつもコンテナが載っているが、それぞれ区画と健全な房、痛んだ房に分けられている。

コンテナを積んだ台車が、斜面の上のトラクターからウィンチで引き上げられている。作業者には大きな労力軽減だ。台車がトラクターの脇につくと、分別して収穫された房がそれぞれ荷台に空けられる。

ベーレンアウスレーゼ用に文字通り粒選りされた貴腐のついた葡萄。糖度が充分上がった上で貴腐がついているかどうか、収穫の際にチェックされる。最も手っ取り早い検査方法は、つまみ食いである。

夕方、収穫作業を終えて帰途につく作業者たち。

大半はポーランドからの出稼ぎの人たちであるが、仕事熱心なことで定評があり、モーゼルの葡萄収穫作業は彼らなしでは成り立たない。

収穫は2週間、11月中旬まで続く見込みだ。

(撮影2004年10月)






トップへ
戻る