(ルーヴァー渓谷の春祭りRuwertal Fruehling)

1.ワイン祭り



ドイツの一年は今も昔も祭りに始まり祭りに終わる。キリスト教が人々の生活とより密接に結びついていた中世に
は、一年365日を聖人の祭日で呼んでいた。祭日にあたらない日でも、前後一週間には必ず誰かの祭日があったの
で、例えば『聖マルティンの次(あるいは前)の火曜日』というふうに呼ぶならわしだった。祭日の中でもとりわけ盛大
に祝われるのが冬の謝肉祭、春の復活祭、そして年末のクリスマスだ。それは現代でも単なる休日に留まらず、地
域ぐるみのイベントとして欠かせないものとなっている。

キリスト教の儀式と民衆の風習が融合した祝祭の伝統は、一年の生活のリズムの基底をなすとともに、ドイツ人を祭り好きな民族としたように思われる。モーゼルの場合は村や町単位で開催されるワイン祭りが、4月から10月にかけて数え切れないほどある。毎週必ずどこかでワイン祭りがあるので、中世のように『○○村のワイン祭りの次の木曜日』という呼び方も、夏場に限って言えば可能だ。





(オレーヴィヒのワイン祭りの花火。8月最初の週末に開催される。)



毎年8月最初の週末金曜から月曜までの4日間は、ト
リアーの郊外オーレヴィヒのワイン祭りである。

長い夏の一日が終わり太陽が地平に近付いた頃、普
段は道端で猫があくびをしているような静かな通りが
次第に活気を帯び始める。地元の醸造所の庭先のワ
インスタンドや村の空き地の移動遊園地に明かりが灯
り、仮設ステージでバンドが演奏を始め、葡萄の枝で
焼くバーベキューの香ばしい匂いが辺りに立ち込める
と、村はどこからともなく現れた人々で埋まる。その間
を縫って子供の頭ほどもある巨大なグラスを手にした
ワイン女王がワインスタンドからワインスタンドへと愛
想をふりまいて行く。西の空に残った明りがすっかり
闇に溶けて消える夜11時ころ、葡萄畑の丘の上から
花火があがる。炸裂音がこだまするその間だけ一息
入れていたバンドも、夜空に静寂が戻ると再び演奏を
始め、人々は夜更けまでワインを飲みながら踊り続け
るのだ。

写真右、二段目左右、三段目右はオレーヴィヒのワイ
ン祭り。三段目左はリーザー村のワイン祭りにて。



こうしたワイン祭りはトリアーだけはない。上にも述べた様にモーゼルの殆ど全ての村で、規模の大小こそあれ似たような祭りが開催されているが、どの祭りにも必ずあるのはワインスタンドと葡萄農家風焼肉、それに生演奏の3つだ。祭りは地元の人々の楽しみであるとともに、観光客誘致のイベントでもある。夏場にモーゼル河沿いを車で走ると、ワイン祭りの開催を告げる横断幕があちこちの道端に張られているのを目にするだろう。



(左:ルーヴァー渓谷の春祭りにて。)
週末金曜か土曜の夕刻、河沿いを走ればどこかの村のワイン祭りに偶然
出くわす可能性は高い。もしも祭りに出会ったなら、少し寄り道してみよ
う。ワインでのほろ酔い気分をドイツ語でヴァインゼーリヒWeinseligというけ
れど、直訳するとワインで祝福された、といったところか。祭りはヴァインゼ
ーリヒな人々で溢れている。もしも誰から話しかけられたら、こちらもヴァイ
ンゼーリヒで会話を楽しもう。旅先での出会いは、きっと忘れられない思い
出になることだろう。

(右:ザールブルグのワイン祭り。9月上旬。下:ニッテル村のワイン祭り
4月下旬。Tag der oeffnen Kellerと呼ばれる祭りで、ワイン農家のケラー
でワインを飲むことができる。)




2.試飲会



町や村が開催するワイン祭りの他に、個々の醸造所や醸造所団体が主催する試飲会があるが、これもまたワイン好
きにとっては一年のリズムを刻むイベントだ。春先の3月から始まる新酒の試飲会は、4月から6月にかけて次第に増
えていく。醸造所が単独で開催する新酒試飲会は顧客に対象を絞っていることが多いが、一般に門戸を開放した試
飲会も多い。その中からいくつか紹介しよう。



まずは4月から5月にかけてモーゼル全域で開催されるワイン&グルメフェスティバルのクライマックスを飾る試飲会。モーゼル全域から中堅の醸造所がトリアーに集まり、400種類前後が試飲に供される。次が毎年5月の第一日曜日にコブレンツで開催される試飲会。アール、モーゼル下流、ミッテルライン、ナーエからゴー・ミヨで紹介されている醸造所が一同に会する。



(毎年11月に開催されていたトリアー郷土博物館での試飲会Weinforum。)
そして6月第一火曜日にベルンカステル・クースで開催されるベルンカ
ステラー・リング醸造所団体の試飲会。業界関係者の参加も多いため
か互いに競い合うようにして自信作が出品される。翌水曜日にはトリア
ーの商工会議所でVDPの新酒試飲会だ。J.J.プリュム、フリッツ・ハー
グをはじめモーゼルを代表する醸造所の新酒をまとめて試飲出来る絶
好の機会とあって、海外からの参加も目立つ。そして9月中旬の競売
会。これも新酒試飲会と同様に火曜にベルンカステラー・リング、水曜
VDPの競売会が開催され、どちらも入場料を払えば誰でも参加でき
る。2004年まで11月最初の週末に開催されていたワインフォーラム−
州の品評会で金賞を受賞したワインの試飲会−は、2005年から11月
ではなく翌年1月の開催になった。



(右:ツェルティンゲン村のワイン祭りに開催される比較試飲会。8月中
旬。下:ルーヴァーはカーゼル村の11月の試飲会Ruwer Riesling
Markt。右下:トリアーの郷土博物館で11月に開催されていた
Weinforumにて)



3月から始まる個々の醸造所の試飲会の一部は、加盟している醸造所団体を通じて日程を公表しており、その場合は事前にメールで参加を申し込めばOKになることが多い。また、大きな試飲会で気に入ったワインを見つけたら、ワインをサーブしている人−大抵は醸造所の人だ−に率直な感想を伝えるといい。試飲会は造り手が消費者の意見を直接聞く機会でもある。そして運がよければ、醸造所で開催される試飲会に誘ってくれるかもしれない。


(ニッテルのワイン祭りに開催されるエルプリングの試飲会。4月下旬。)
また、試飲会に訪れている人々も多かれ少なか
れワイン祭りと同様にヴァインゼーリヒだ。あから
さまに酔っ払うのは論外だが、節度をわきまえて
会話を楽しめる程度の軽い酔いは、何しろ数百
種類試飲することも出来る試飲会のこと、やむを
得ないだろう。もっとも、試飲会とワイン祭りと違っ
て、ワインを捨てる容器が各所に設置してある。
過度の酔いを避けるためには、飲み込まずに口
に含んでは吐き出した方がいい。ちょっともったい
ないけれど。




ワイン以外にも、夏の観光シーズンにはコンサートや演劇をはじめとして様々なイベントが開催されている。旅の日程が決まったら、以下のサイトで現地のイベント情報をチェックしてみよう。あるいは逆に、イベントにあわせて日程を決めるのもいい。せっかく訪れるのだから、120%モーゼルを満喫していただけることを願っている。






(左:ザールブルグのワイン祭りにて。)



お役立ちリンク集

www.dwfjp.com ドイツワイン基金日本支部のサイトにもドイツ各地の最新イベント情報がある。ここで紹介しているサイトのなかでは唯一日本語。
www.mosel-reisefuehrer.de モーゼルの最新イベント情報。現段階で決まっている2005年に開催されるワイン祭りの全予定。今後アップデートがありそうだ。
www.trier.de トリアー市のサイト。訪問日のイベントを検索できる。
www.mosellandtouristik.de モーゼルのイベント情報。
www.msr-wein.de モーゼルワイン広報団体のサイト。ワイン祭りや試飲会の予定。
www.wein-festival.de 毎年4月から5月にモーゼル全域で開催されるワインとグルメ祭りのイベント情報。
www.deutscheweine.de ドイツワイン基金本部のサイト。モーゼルに限らず全国のワイン祭りや試飲会情報が検索できる。
www.vdp.de VDP加盟醸造所のかかわる試飲会情報が検索できる。
www.bernkasteler-ring.de ベルンカステラー・リング醸造所団体のサイト。試飲会予定もある。
www.moselfestwochen.de モーゼル夏の音楽祭のサイト。コンサートの予定、チケット予約など。
www.antikenfestspiele.de 毎年夏に開催される古典演劇祭のサイト。ローマ浴場跡や円形競技場跡など野外で上演される。





トップへ
戻る