自家醸造は、実はこれが初めてではない。収穫を見学した際や収穫祭で絞りたての果汁をわけてもらい、何度か発
酵を試みたことがある。発酵に必要な酵母は葡萄の果皮に自然についているので、圧搾して放っておけば勝手にワ インになるはずなのだ。が、ちゃんと飲めるワインを造ることは簡単なようでいて、実はそれほど単純ではない。
ワインに甘みを残したければ、酵母の活動を途中で止める。そうしないと果汁の糖分は全てアルコールに転化して辛
口になってしまう。発酵を止めるには冷却か二酸化硫黄の添加が一般的だ。しかし樽によって酵母の性格に違いが あり、素直に発酵が止まる樽もあれば、なかなか言うことを聞かずにしぶとく発酵を続ける樽もあるという。だから狙 い通りの味わいに仕立てるには、果汁と樽の性格をよく知ることが必要であり、それには何よりも経験がものを言う。 だから新たに就任したケラーマイスターが、個々の畑の果汁や樽のクセと勘所を把握して醸造所のポテンシャルを引 き出すには、早くても2、3年はかかるようだ。
(2005年3月)
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