冷たい小雨の降りしきる中、バスはモーゼル河に沿ってベルンカステルの隣村、ヴェーレンへと走っていた。中部モ
ーゼルを訪れるのは昨年の10月上旬以来だ。当時鮮やかに色づいていた渓谷一面に広がる葡萄畑も、今は灰色
の景色の中にしっとりと沈み込んで見える。シンプルな幾何学的曲線を描いた橋のたもとでバスを降り、緑褐色に濁
りつつ滔々と流れるモーゼル河に沿って少し歩いたところに、今日の試飲会の会場、S.A.プリュム醸造所がある。醸
造に使う樽の内側のように曲線を描いている天井の下のホールでは、訪れた人々のざわめきとともに、ワインの香り
が渦巻いていた。
『100年に一度の当たり年』『記録的な果汁糖度を達成』『1959年に匹敵』などといった景気のいい言葉が、昨年の収
穫期にマスコミを賑わせたが、さてその成果は実際どうなのか。猛暑に伴う極度の乾燥の被害があちこちであった
が、その影響はどうだろうか。
2003年の経過について、Max ferd.リヒター醸造所が詳細に報告しているので、抜粋・意訳して紹介する。
「2003年は嵐で幕が開け、アイスワイン用に残しておいた葡萄に相当な被害が出たが、1月8日に訪れた氷点下12
度の寒気でアイスワインを収穫することが出来た。この短期間の寒気の後、比較的穏やかな冬が続き、充分な降水
があった。3月からすでに日照時間は平年よりも長く、記録的に長い日照時間と高温が、葡萄の生長期間全体を通
して継続し、それを中断したのは5月の激しい短期間の雨だけである。
葡萄の成長は3月下旬に順調に始まり、4月末に一通り展葉した。これは平年よりも14日ほど早い。開花は6月始
めに一週間ほどで滞りなく進み、この時点で良年になるであろうとの見通しが立った。生育は例年に比べ3週間早く
進行し、そのまま収穫に至った。
全ての花房がまんべんなく受粉するという完璧な開花の後、過剰な房の除去
を行った。6月の充分な雨の後、格段に気温が上昇し乾燥した7月が続き、8
月は百年に一度と言われる暑さになった。この月は最高気温を見ても26℃以
上の日が26日間もあり、うち11日は35℃以上に達した。これほどの日照と高
温が重なった年は気象記録を100年以上遡っても例を見ないもので、1976,
1959, 1949, 1947, 1921年よりも厳しい年となった。
(7月中旬の葡萄。びっしりと実が詰まり、葉も勢いがいい。)
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猛暑は乾燥ストレス、葉と果実の日焼けをもたらした。葡萄の負荷を軽くするために8月、日焼けの被害のみられる房としおれた葉を除去した。極度に乾燥した畑では給水を行い、頻繁に土壌の手入れを行い、湿気が失われることを出来るだけ防いだ。
(8月上旬の猛暑。快晴が長期間続いた。)
|
9月の残暑で葡萄の成熟はさらに進み、10月7日に収穫を開始。その
後早めに訪れた寒気により果実の成熟は滞ったが、11月11日、アイス
ワインを除く全ての葡萄の収穫が完了するまで作業は順調に進行し
た。
結果的に果汁糖度は軒並み90°から115°エクスレに達し、100°の
果汁が最も多かった。ドイツワイン法の規定に従えば、アウスレーゼ以
上のみを収穫したことになるが、品揃えのためQbA、カビネット、シュペ
ートレーゼへの格下げを行なわざるをえない。成熟度の高さは高貴な甘
口ワインの収穫を容易にし、ブラウネベルガー・ユッファー・ゾンネンウア
ーのTBAは250°エクスレに達した。
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(9月上旬、乾燥で部分的に干からびてしまった房。葉も一部枯れている。) |
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一方で酸度の過剰な低下が収穫直前に問題となったが、EU委員会の速やかな決断でモストとワインの安定化に必要なワイン酸の投入が認められた。問題のみられる果汁は心配していたほど多くはなかったが、調和のとれた果実味を得るため、個々のモストに必要に応じて発酵前にワイン酸を加えた。」
(10月中旬、完熟したリースリング。)
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2003年は高温と乾燥、それに伴う葡萄の日焼け、酸度の極端な低下といった難しい状況を乗り越える必要があっ
た。その為、よいワインを造るには例年にも増して造り手の熱意を、畑作業とともに醸造作業にも要した年であったと
言えそうだ。
2. テイスティングメモ
2.1 今回の試飲会での醸造所の印象
★★★★ |
辛口から甘口まで上出来。安心して買える。 |
★★★ |
2003年産はややバラつきがあるが、充分実力のある醸造所。 |
★★ |
いまひとつ。 |
2.2 個々のワインの個人的評価
90-100 |
素晴らしい。大きなポテンシャルがある。 |
85-89 |
充実したワインで、今飲んでも素直に美味しい。是非欲しい。 |
80-84 |
日常用ワインとして充分美味しい。 |
79以下 |
何も無ければ飲んでもいい。あまりお勧めできない。 |
Weingut Schmitges (Erden)
http://www.schmitges-weine.de |
★★★★ |
2003 Grauschiefer
Riesling QbA trocken |
84
|
広がりのあるフレッシュな香りにシーファーのヒント。酸がしっかりして凝縮感の
ある果実味、グレープフルーツのヒント。 |
2003 Erdener Treppchen
Riesling Spaetlese "S" |
86
|
香りは閉じている。しっかりした口当たりの複雑な果実味、オレンジのヒント。長
いアフタ。残糖11g/Liter、自然発酵、接木なしの葡萄樹からの収穫。ポテンシ
ャルあり。 |
2003 Erdener Praelat
Riesling Spaetlese "Alte
Reben" |
86
|
やや閉じている。柑橘、桃、完熟したフルーツのエッセンスの甘み、長いアフタ。
ピュアな甘さの中辛口。 |
2003 Erdener Treppchen
Riesling Kabinett No. 7 |
85
|
甘酸のバランスのとれたカ
ビネットらしいフルーツ感、
黄色い柑橘、綺麗な酸味 |
|
2003 Erdenr Treppchen
Riesling Spaetlese No. 12 |
86
|
たっぷりしたフルーツの口
当たり、濃厚、アフタに黄
色いリンゴ、桃 |
2003 Erdener Praelat
Riesling Auslese ** "Alte
Reben" |
90
|
非常に凝縮感の高い、こっ
てりしたアウスレーゼ、パイ
ナップルのヒント、フルーツ
とミネラルの塊。長いアフ
タ、Excellent!! |
波に乗っている醸造所。2002に引き続き、アロマ豊かでたっぷりとしたフルーツが魅力的。今回の試飲会では最も
好評を博していたが、個人的には2002年産の方が魅力的だったと思う。(写真は醸造所のご主人シュミトゲスさん
(左)と、試飲に訪れた人々。) |
Weingut Moenchhof (Uerzig) http://www.moenchhof.de |
★★★★ |
2003 Moenchhof Riesling QbA trocken |
83
|
酸のしっかりしたフルーツ、ミネラルのアフタ、やや濃いめ。 |
2003 Erdener Treppchen Riesling
Spaetlese trocken |
85
|
柑橘の香りが明確、ミネラルと酸味が繊細ながらしっかりとしたまとまりを見せている。 |
2003 Uerziger Wuerzgarten Riesling Kabinett |
86
|
典型的なユルツィヒ村のフルーツ感。濃いめでエレガント、柑橘とパイナップル、長いアフタ。 |
2003 Erdener Praelat Riesling Auslese |
89
|
たっぷりとして複雑なフルーツがミネラルと一体化して調和。長いアフタ、大きなワイン。 |
安定した出来栄えで、2003年も2002年と同様、醸造所の個性のしっかり出ている。 |
Weingut Joh. Jos. Christoffel Erben (Uerzig) http://www.moenchhof.de |
★★★★ |
2003 Uerziger Wuerzgarten Riesling
Kabinett trocken |
85
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ふくらみのあるグレープフルーツ香、しっかりした口当たり、アフタも柑橘 |
2003 Uerziger Wuerzgarten Riesling
Spaetlese halbtrocken |
86
|
閉じているが、ボリューム感のある、たっぷりした柑橘。 |
2003 Uerziger Wuerzgarten Riesling Spaetlese |
87
|
完熟したフルーツの甘みにヨーグルトのヒント、長いアフタで素直に美味しい。 |
2003 Uerziger Wuerzgarten Riesling Auslese*** |
89
|
濃厚でたっぷりした甘口、クリストッフェルらしい大きなフルーツ感。 |
メンヒホフ同様、安定している。2002年との差はほとんど無いように見える。 |
Weingut Selbach-Oster (Zeltingen) http://www.selbach-oster.de |
★★★★ |
2003 Zeltinger Sonnenuhr Riesling
Spaetlese trocken |
85
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ミネラルの繊細な香り、ミネラルの個性がはっきり表に出た味、グレープフルーツのヒント、発酵香。 |
2003 Zeltinger Himmelreich Riesling
Kabinett halbtrocken (Diabetiker) |
83
|
カビネットらしい軽めの柑橘、アフタに土壌に由来するアミノ酸系のうまみ。 |
2003 Zeltinger Sonnenuhr Riesling Kabinett |
85
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綺麗に調和のとれた果実味、グレープフルーツのヒント、軽いミネラル。 |
2003 Zeltinger Sonnenuhr Riesling Spaetlese |
86
|
コンパクトで中身の詰まった果実味、長いアフタにミネラルの風味。 |
2003 Graacher Domprobst Riesling Auslese* |
89
|
がっしりとした固めの甘口、グレープフルーツとミネラルのヒント。 |
2003 Zeltinger Sonnenuhr Riesling Auslese** |
88
|
中身の詰まった複雑な果実味、グレープフルーツのヒント、長いアフタ。 |
ツェルティンゲン村らしいミネラルのはっきりしたワインで、バランス良く安定している。 |
Weingut Max ferd. Richter (Muelheim) http://www.maxferdrichter.com |
★★★ |
2003 Brauneberger Juffer Riesling
Kabinett trocken |
85
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しっかりした果実味、凝縮したフルーツ感、しっかりした酸味、長いアフタ。 |
2003 Brauneberger Juffer Riesling
Spaetlese trocken |
85
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しっかりした果実味、長いアフタ、綺麗な酸味。 |
2003 Brauneberger Juffer-Sonnenuhr Riesling Auslese halbtrocken |
88
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ミネラルの香り、複雑な果実味、アプリコット、桃など多様なフルーツのヒント、長いアフタ。 |
2003 Brauneberger Juffer Riesling Kabinett |
84
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軽めで甘酸のバランスのいい果実味。 |
2003 Brauneberger Juffer-Sonnenuhr Riesling Spaetlese |
86
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ミネラルの香り、エッセンス系の甘みにミネラルのヒント、多様な果実味。 |
2003 Brauneberger Juffer-Sonnenuhr Riesling Auslese |
88
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繊細で上品、ミネラル、マスクメロン、エッセンスの甘み、長いアフタ。 |
2002年産も良かったが、2003年産はそれを継続しつつ向上している。ブラウネベルガー・ユッファー・ゾンネンウアーは果実味の印象が多面的で楽しめる。現状では甘口より辛口に好感するが、木樽発酵のため落ち着くまで時間を要するワインであることを考えると、甘口はこれから良くなりそうだ。 |
Weingueter Wegeler (Bernkastel-Kues) http://www.wegeler.com |
★★★ |
2003 Wegeler Reisling trocken |
84
|
ややシンプルながらたっぷりとした口当たり、柑橘にミネラルの味。 |
2003 Wegeler Riesling halbtrocken |
85
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丸く角のとれた、たっぷりした口当たり、完熟した柑橘のヒント。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling Spaetlese trocken |
85
|
酸のしっかりした完熟した果実味、飲み応えのある辛口 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling Kabinett |
86
|
クリーンな青リンゴの香り、たっぷりして重めのボディ、中身の詰まった果実味、グレープフルーツ、桃。 |
2003 Bernkasteler Doctor Riesling Spaetlese |
88
|
ミネラルの香り、複雑な果実味、桃、パッションフルーツ、濃厚、長いアフタ。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling Auslese |
89
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ミネラルの香り、しっかりとして熟した酸味、完熟した果実味、濃厚。 |
辛口は酷暑の影響か、ボディの重さがやや目立つ。甘口は2002年同様濃く美味しいが、2002の方がしなやかで魅力的だった。醸造所責任者ブライト氏によれば渇水ストレスでミネラルが果実に充分行き渡らなかった畑もあるそうだ。ただ、ベルンカステラー・ドクトールは根が深いので大丈夫だったという。 |
Weingut Dr.Pauly-Bergweiler (Bernkastel-Kues)
http://www.pauly-bergweiler.com |
★★★ |
2003 Erdener Treppchen Riesling
feinherb |
84
|
滑らかなフルーツ香にほのかなミネラル、たっぷりした柑橘に中位のアフタ |
2003 Bernkasteler Badstube Riesling
Kabinett |
84
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ミネラルが前に出ていて、やや軽め。グレープフルーツのヒント。 |
2003 Uerziger Goldwingert Riesling Spaetlese |
84
|
やや閉じている、フレッシュな果実味、グレープフルーツ。 |
2003 Bernkaslter alte Badstube am Doctorberg Riesling Spaetlese |
84
|
ミネラルが前に出ている。完熟しているがやや苦味があり、すこし厳しい印象。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling Spaetlse |
85
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少し堅いが、黄色いリンゴ、桃のヒントにミネラル。 |
2003 Bernkasteler alte Badstube am Doctorberg Riesling Auslese |
88
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ミネラルと柑橘、シーファーの香り、やわらかで奥行きのあるフルーツ、桃のヒント。 |
現状ではミネラルとフルーツがややアンバランスで、フルーツの中に苦味がすこしあるように感じた。2002年の方が素直に魅力的だったと思う。2003年産は甘口・辛口ともに数ヶ月熟成を待ってからもう一度確かめてみたい。 |
Weingut Kees-Kieren (Graach) http://www.kees-kieren.de |
★★★ |
2003 Riesling Hochgewaechs trocken |
84
|
コンパクトにまとまった果実味、塩気に似たミネラル風味、アミノ酸系のアフタ。 |
2003 Graacher Domprobst Riesling
Spaetlese trocken |
86
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たっぷりした果実味、グレープフルーツのヒント、凝縮感のある長いアフタにミネラル。 |
2003 Graacher Domprobst Riesling Auslese feinherb |
87
|
深い香りに柑橘のヒント、完熟して複雑な果実味、黄色いリンゴのヒント、長いアフタ。 |
2003 Graacher Himmelreich Riesling Kabinett |
86
|
たっぷりした完熟した果実味、グレープフルーツ、桃のヒント。 |
2003 Graacher Himmelreich Riesling Spaetlese |
86
|
たっぷりした果実味、柑橘のヒント、長いアフタに凝縮した柑橘とミネラル。 |
2003 Graacher Himmelreich Riesling Auslese |
86
|
しっとりとした香り、完熟した果実味に黄色いリンゴ、ミネラルが少しごつごつしている。 |
2003年産は凝縮した果実味が共通して感じられ、上出来。今後の楽しみな造り手。 |
Weingut S.A. Pruem (Bernkastel-Wehlen)
http://www.sapruem.com |
★★★ |
2003 Pino Blanc "UNO" |
86
|
凝縮して濃厚・複雑なピノ・ブラン。ほんのりナッツ。がっしりして
飲み応えあり。 |
2003 Riesling Kabinett trocken |
84
|
充実したフレッシュな果実味、青リンゴ。 |
2003 Sebastian A. Riesling
Kabinett feinherb |
84
|
クリーンなアロマ、充実した柑橘にしっかりしたミネラル。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling
Kabinett trocken |
85
|
柑橘の甘いアロマ、たっぷりとした果実味、濃いめ、グレープフ
ルーツのヒント。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling
Spaetlese |
85
|
ミネラルのストレートな香り、蜂
蜜、メロン、グレープフルーツな
ど様々なヒント。エッセンスの
甘み、長いアフタ。 |
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2003 Graacher Himmelreich
Riesling Auslese Fass 32 |
85
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濃いめだが閉じ気味、ミネラル
にグレープフルーツの甘皮の
苦味、長いアフタ。Fass番号付
きのアウスレーゼとしてはひま
ひとつ。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling
Auslese Fass 17 |
90
|
リキュールに漬けたケーキ、ク
リーミーな舌触り、蜂蜜、パイ
ナップル、黄色いリンゴなど多
様なヒント、凝縮したフルーツ
の長いアフタ。Excellent! |
2003年は玉石混交。ピノ・ブランは恐らく猛暑の影響がポジティブに出て、ある意味モーゼルよりもバーデンにあり
そうな辛口白になっていると思う。(写真は醸造所オーナーのライムンド・プリュム氏。人当たりのよい気さくなおじさ
んである。) |
Weingut Kerpen (Bernkastel-Wehlen) http://www.weingut-kerpen.com |
★★★ |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling
Spaetlese trocken |
85
|
完熟した果実味、ミネラル、凝縮感のあるアフタ。 |
2003 Graacher Himmelreich Riesling
Kabinett feinherb |
84
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クリーンな果実味、グレープフルーツのヒントにミネラルが調和。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling Kabinett |
85
|
コンパクトに中身の詰まった果実味、オレンジのヒント、アフタにミネラル。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling Auslese** |
85
|
やや軽めのアウスレーゼ、グレープフルーツのヒント、アフタにエッセンスの甘み。☆二つにしては物足りない? |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling Auslese*** |
88
|
複雑で中身の詰まった果実味、アプリコットのヒント、長いアフタ。こちらは説得力がある。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling Beerenauslese |
90
|
軽い貴腐香、口に含むと貴腐香が一層はっきりと香りたつ。エッセンスの甘み、蜂蜜、長いアフタ。170°エクスレ。綺麗な貴腐ワイン。 |
完熟した果実味が2003年らしい。モーゼルらしい軽めの繊細さが、今年はとりわけ好感できる。 |
Weingut Studert-Pruem Maximin-Hof
(Bernkastel-Wehlen) http://www.studert-pruem.de |
★★★ |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling
Spaetlese trocken |
84
|
しっかりした柑橘にミネラル。 |
2003 Studert-Pruem Riesling QbA
Classic |
84
|
柑橘のしっかりしたバランスのいい辛口、少しアフタはあっさりめ。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling Spaetlese halbtrocken |
85
|
濃い目で味わい深いグレープフルーツ。 |
2003 Graacher Himmelreich Riesling Kabinett |
84
|
甘酸のバランスの良いしっかりした果実味。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling Spaetlese |
85
|
たっぷりしてバランスの良い果実味。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling Auslese |
85
|
少しミネラルが強く、厳しい印象を与える甘口。 |
地味ではあるけれど、しっかりしたワイン。 |
Weingut Fr. Friedrich=Kern (Bernkastel-Wehlen)
http://www.freidrich-kern.de |
★★ |
2003 Zeltinger Himmelreich Riesling
trocken |
79
|
ややシンプルで木樽の匂いがする。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling S
trocken |
83
|
広がりのある香り、たっぷりした果実味だが、わずかに木樽の匂い。 |
2003 Bernkasteler Johannisbruennchen Riesling Kabinett |
84
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たっぷりした果実味、オレンジのヒント。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling Spaetlese |
84
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たっぷりした果実味、なぜかカラメルの甘み、個性的。 |
2003 Wehlener Sonnenuhr Riesling Auslese |
85
|
繊細に広がる果実味、グレープフルーツのヒント。 |
2003 Zeltinger Himmelreich Riesling Auslese |
88
|
蜂蜜、完熟した柑橘、パイナップル、スパイシー。 |
良かれ悪しかれ個性的なワインを造っている。木樽の匂いはやや不自然に感じた。 |
3. まとめ
今回試飲に供されたワインのほとんどが、正式な瓶詰め前の樽試飲であることを考えると、2003年産の出来具合に
ついて良し悪しを言い切ることは出来ない。大抵のワインの場合、瓶詰めされてからおよそ半年後に、ようやく本来の
持ち味を発揮するものだからだ。
そうした前提の上で、しかも個人的な印象にすぎないと断った上で印象を述べるならば、2003年の猛暑はワインにと
っても造り手にとっても、メリットよりもデメリットを多くもたらしたのではないかと思われる。一概には言えないが、高い
果汁糖度はボリューム感のあるボディを、特に辛口に与えており、それはネガティブな印象ではない。しかしフルーツ
のしなやかさ、伸びやかさ、奥行きといった面で、これは、といったものに残念ながら出会わなかった。また、甘みと
酸味のはっきりとした綺麗な調和を示しているワインは、今回数えるほどで、それが補酸の結果なのかどうかはわか
らないが、たとえそれを行ったワインであったとしても、その操作はマイナスには出ていない。
甘口では例年よりも完熟した柑橘−黄色いリンゴ、オレンジ−を感じるものが多かったが、カビネット、シュペートレー
ゼ、アウスレーゼの差が微妙になっていて、とりわけアウスレーゼとシュペートレーゼの差は値段相応であるかどう
か、検討の余地がある。また、甘みと酸味のバランスの良さで、カビネットに格付けされているワインに魅力を感じる
ことが多かった。アウスレーゼならば思い切り濃厚に仕立ててあるものに説得力を感じたが、価格も相応に高い。
100年に一度の猛暑がもたらした最大の成果は、やはり記録的な果汁糖度のモストから仕立てられたTBAだろう。し
かし、その生産量はいずれにしてもわずかで、高価になることは疑問の余地がない。
葡萄の成熟を人間の人生に例えれば、2003年産の個性はわかりやすいかもしれない。人の相貌が人生経験で造ら
れるとするならば、猛暑と旱魃で苦しんだ経験が、ワインの果実味の相貌を多かれ少なかれ厳しいものにしている。
次第に葉がしおれ、実がしなびていく中で、生産者がどれだけ葡萄に救いの手を差し伸べ、癒しえたか。それが、ワ
インの出来に現れている年と言えそうだ。
(2004年3月)
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